青春の告白



なんとなく気付いてはいたんだ。



「お前米原と付き合うとるん?」

「知らん」


うざい。

付き合ってるとかそういうの。

噂とかも。

だからなんやねんて感じ。

好きじゃない。



「なんやそれ」

「うっさぃ、桃山には関係ない」

「じゃぁ、楽市は」

「っ……桃山‥コゾーには何も言うな」

「まだ何も言うてへんて」


ダメだ。

アイツにだけは知られたらダメだ。

アイツの悲しむ顔なんて、想像しただけでキモイ、見たくない。


だから、ダメだ。



「なんでや?俺には関係ないんやろ?」

「お前には関係のうても、アイツには関係あんの。言うたら死ね、殺す」

「物騒やな。冗談やて、言わん言わん。米原呼んできてたるから機嫌直し」


米原は呼んでこなくていいし、頭に手を置くのをやめて欲しい。

子供じゃないんだから。

子供はこんなに悩んだりしないんだから。



「アディオス」

「はよ、行けや」


全く。



「思春期ー、青春ー、とか死ねっ!」

叫んでみた。

でも、なにも変わらない。

思春期がなくなるわけでもないし、青春がなくなるわけでもない。

子供と大人の定義が微妙な年頃。

思春期はこの屋上から見える春の空以上に青臭く――苦いのだ。



錆付いた音で背後の扉が開く。


「米ば……ぁ」


早かったなぁ、と思いながら振り返って、入ってきた人物が米原ではない事に気付く。


「コゾー……」

「コゾー言うなや」


沈黙。

次の言葉が浮かばない。

自分はここで米原を待っていた訳で、楽市を待っていた訳ではないのだ。

息苦しい静寂の中、楽市が口を開いた。


「舞子」

「……なんや」

「すまん」

「なにがや」


一瞬の間。

楽市はノブに手をかけて、背を向けていたから――



「俺お前の事好きやわ」



――舞子には楽市がどんな顔をしているのか分からなかった。



「すまんな」


舞子が何か言う前に扉は、ギィギィ音をたてながら閉まった。

ただっ広い屋上にまた一人。



「……なに謝っとんねん、アイツは」



自分たちは子供でもなく大人でもない。

その狭間で不安定で宙ぶらりんな感覚に悩まされる年頃なのだ。

それが思春期。

それも青春。



このまま米原を待とうとしている自分に気付いて、青すぎる春の空を睨んだ。


























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